シェルが風力と太陽光の開発を中止?

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風力と太陽光(太陽光と限っているのは太陽熱はまだ続けるからなのか知らん)への先行投資をとめる代わりにバイオ燃料をやるというのにずっこけたんだけど,石油会社としてはこの方向性はわからないでもない.

結局のところ

  • 最悪,40年は石油が出続ける.
  • 自動車の需要はなくならないが,電気自動車は電池の供給を考えると金持ちの道楽にとどまらざるを得ないから,液体燃料の需要は大幅に減るとは考えづらい.
  • 今のガソリンスタンド(当然,それを支える製油所+輸送網)どうするの?

とかを考えると,太陽光と風力などの自然エネルギーに関しては何のための投資かというのを投資家に説明しづらい状況にあると思う.

もっと具体的に個別の案件として考えると風力に関しては,だいぶ発電機の開発が進んでいてメーカーも固まってきてることを考えると,商品を出してなくて「先行投資」とか言ってるシェルはもう追いつける感じがしないから中止するのは妥当.

太陽光に関しても今普通にそれで大規模に商っている会社があって,その事業構造が最悪なことに薄型パネルの事業構造に近いと来ている.つまり,お金があれば事業が始められるのに,その事業で作る商品は市場価格で取引されるという構造.太陽電池パネルに関していうとその上に最終商品の値段を下げなければいけないという国や消費者からの明確な圧力がある.液晶パネルは競争で勝手に下がっていっただけだけど,それよりも悪いというのは感動的.

で,今大規模に商っていない会社としては,じゃあ,今作られているようなものではない(シリコン系じゃない)革新的なコストパフォーマンスを有する太陽電池を研究すればいいんじゃないということで研究を進めざるをえない.たとえば,CIGSをやりますといってたホンダとか(トヨタもとうぜん社内で太陽電池を開発してる部署があるが,あまり宣伝してない?),色素増感をやりますといってたソニーみたいな話.

ただ,革新的なコストパフォーマンスというのが曲者で,有機ELやプラズマも利益なき繁忙を繰り返す液晶になかば葬られたことを考えると,コスト加味の指標だと同じようにシリコン系に押しつぶされる可能性は高い.さらに,感動の質というお金に換算しづらい指標で勝負可能なディスプレイと違って,発電効率とコストという数字でしか評価されないということを考えると絶望的ですらある.自分が投資家でほかにキャッシュを投下するところがあれば,中止するという圧力をその会社にかけ続けたくなるくらいに成算が低い.

ところで,これはあまり関係ないのだけど電気自動車とかハイブリッド車の話で資源量(特にリチウム)を意識した議論が少ないのが気になる.供給可能な電池の量から計算すると今走ってる自動車を全部リチウムイオン電池を搭載したプラグインハイブリッドや電気自動車には変えようがなくて(301 Moved Permanently),ニッケル水素なら可能かといわれると,当座は大丈夫だけど,将来的には陽極のニッケルもそうだし,負極の水素吸蔵合金に使ってるマンガンあたりも枯渇する危険性が高い(404 Not Found参照).

この資源に関する物材機構の研究は結構自分としては衝撃的で,この研究によると,クラーク数上位のアルミ以外の金属は基本的にほとんど全部枯渇することになる.これが白金とかリチウムだとかの用途がすぐに思い浮かぶけど大して使用されていないようなものだけが枯渇するのならいいんだけど,銅とか鉄ですら危険だということになるともうどうにもならない.リサイクルは可能だからこれが即枯渇するということにはならないのだけど,リサイクルには当然エネルギーが使用量の多いベースメタルだと特に大量に必要になるわけでCO2削減なんて夢のまた夢ということになりかねない.

途上国が普通の生活をするようになるということ*1を前提にすると,CO2削減なんて道楽を進めてる余裕は人類にはないんじゃないだろうか.

*1:自然な予想かつ目指すべき目標