前にanti-reflection coatingに関して色々書いた*1。その時は,反射防止コーティング(AR)を構成するのに必ずしも低屈折率の材料は必要ないということを示した。が,そりゃ低屈折率の材料を使ったほうが設計は楽になるのは自明。じゃあ,ARに関して低屈折の材料を開発するご利益は,実際にどれほどだろうか?というのが今回の計算のテーマ。
今回使ったコードはgithubにあげてある。
想定した系は屈折率1.5の基板に対する1層AR(SLAR)及び2層AR(DLAR)。
1層ARの場合には屈折率を横軸に膜厚を最適化した上での垂直入射の反射率*2をプロット,2層ARの場合には,最表層の屈折率を横軸に,中間層の屈折率をそれ以上として,それぞれの膜厚を最適化させた上での反射率をプロットしたのが以下の図。反射の色味とかは全く見てない。
結果をまとめると以下の様な感じ。
- 制約条件なしだと,SLARの場合には,n1=1.225, d1=112.5nmがベスト。DLARの場合には,n1=1.108, d1=122.3nm, n2=1.353, d2=100.1nmがベスト。
- SLARの場合には1.23を最小として,屈折率をどっちにずらしても反射率は上がる。
- DLARの場合にはn1=1.23くらいまでは最小屈折率を小さくすると順調に反射率が下がる。そこからは単調な変化はしなくなるものの,1.1程度まで複雑な挙動を取りながら下がる。
- DLARの場合にはn1=1.21を境に,n2を基板より大きくしたほうがいいか小さくしたほうが良いかが入れ替わる。
なので,1層を想定するにしろ,2層を想定するにしろ,n=1.5の硝材に対するARとしては,n=1.23あたりが材料開発の目標になるみたい。
*1:anti reflection coating 2題。にしても,今見るとすごい日に記事書いてんな。この時は地震が来るなんてつゆとも思ってなかったんだろうなあ。
*2:D65での各波長ごとの反射率を視感度で重み付けしたもの