パスタで液晶

今日ふとお昼に出たパスタを見ていたら,棒状のパスタが集まって層構造を形成していた*1.いままで,こういうデモに使えそうなサイズかつ手軽さのものでスメクティック層が出ると思っていなかったので驚いた.

ネマティック相ならある程度細長いものならば適当にゆすれば作れるのは,割りばしとかつまようじとかで体験できると思う.このとき,どうやっても頭としっぽの区別が(自発的には)つかないと言うのがつまようじを揃える時にすごいむかつくわけだけど,またそれは別の話.

で,これは昔偉い人が(Onsagerさんとか)理論的に証明したことで,相互作用のない単なる棒でもある程度の密度で詰めれば勝手にネマティック相になる.

でも,スメクティック相はそこまで簡単じゃなくて,単なる棒だと少し厳しい.実際の分子だと細長い分子が隣り合った時に,重なった長さを大きくしようと言う働きがあって,これが棒状の分子がくっついて層を作る原動力になるのだけど,目に見えるようなものでこういう相互作用を持ったものと言うのはなかなか思いつかない.粒子の間で引力が働くと言う事自体が珍しいのに,さらに,棒が縦に連なった時と横に並んだ時とで横に並んだ時の方がエネルギー的にだいぶ楽にならないといけない.

で,本題のパスタに戻る.今日のパスタは(たぶん)マカロニリガーテ*2のクリームソースあえ(具はサーモンだけどどうでもいいや).

スメクティック相になるのに必要な条件ってのはいくつかあって

  1. さっき言った,棒同士が横にいた時の方が安定になる相互作用
  2. 棒が剛直
  3. 棒の長さが揃っている
  4. でも,どこがが少し不ぞろい(揃いすぎていると結晶になってしまうので)

で,何がすごいって上のパスタはこの条件を全部備えている.

まず,クリームソースの粘性により重なってる部分の表面積に比例した引力が働く.さらに,このパスタは中空だから棒の上下方向の引力はほとんどない.次に,このパスタはそこそこ壁が厚い上に,イタリアではアルデンテを通り越した固さで出されるのが普通なので,けっこう固い.たぶん,細目のマカロニでは再現できない.で,ペンネを想像してもらえればわかると思うけど,この手の少し太めのパスタは長さがきっちり揃っている.でも,茹でるものだから少し径や長さに違いが出る.


いろいろ考えると,条件を調整すれば(パスタの形とソースって事だけど)もっと複雑な相も出せるんじゃないかと思うし,普通にスメクティック相が出るだけでも良いデモンストレーションになると思う.

*1:といっても,SmBか,ほとんどCryBだけど

*2ペンネリガーテを斜めじゃなくて平行に切ったような形.日本のスーパーで売ってるのを見たことがない