失われた信用

Climate gateを結構馬鹿にしてたというか,メール本文中に"trick"があったくらいでそんな大騒ぎして,素人さんは困るわ的なことを思ってたわけですよ.というか,trickといってもせいぜい移動平均のやりかたを誤魔化してたりとか,FFTをかける時に窓をいじってごにょごにょとか,そういう恣意的は恣意的だけど言い訳が出来そうな範囲のtrickだと思ってた.

が,no title経由で(この記事自体は煽りがきつすぎるのと,温暖化否定論界隈では懐かしいグラフがあったりして結構きついものがある),trickと呼ばれるものの実態を知って唖然とする.

 yrloc=[1400,findgen(19)*5.+1904]

 valadj=[0.,0.,0.,0.,0.,-0.1,-0.25,-0.3,0.,-0.1,0.3,0.8,1.2,1.7,2.5,2.6,2.6,2.6,2.6,2.6]*0.75

これはだめでしょ.完全に恣意的にデータを改ざんしてる.

詳細は以下を参照してもらうとして,

no title(プログラムの意図が載っている)

no title(プログラム自体の詳細が載ってる)

最初の記事を見ると,実測定データと年輪から求めた気温のデータがあわないから,合わせるべくえいやっとデータを改ざんしますとシレッと書いてある.締切に追われた学部生でもそんなことしないだろと.どんだけ科学者としてレベルが低いのかと.

基本的に現在なんでCO2削減しようと言ってるかと言われれば,シミュレーションで人為的温室効果ガスを考慮しないと今の気温が説明付かないから(テクノロジー : 日経電子版参照).

が,一応元データがある実験ですらああいうデータ改ざんがありだとすると,元データも何もないシミュレーションの信用なんてゼロだろとか言われても(技術的にしか)反論できないわけで.失われた信用をどうやって取り戻すのか.

個人的には,素人さんに見せるデータだからしょうがないとしても,温暖化関連のシミュレーションは「合わせすぎ」の感が否めない.つまり,一週間先の天気もろくに当たらないのに,10年単位のデータがあんなにきちんと合うなんてなあという素朴な疑問がある.だから,たぶんシミュレーションのプログラムの中を探れば,上のような恣意的に「見える」パラメータの一つや二つすぐに出てくると思う.科学的に妥当だったとしても,それが出てきたらたぶん持たない.もちろん,そこまで事態が進展する可能性はだいぶ低いけど.

で,こういう巨大な研究スキャンダルといえば自分は真っ先にSchönを思いだす.

あの時はSchönのやったことがユニークすぎたし,完全に物理の世界の話に収まってたから,Schönは学会から追放+Schönのやったことは過去にさかのぼって全部ウソということで始末をつけることが出来た.これが,実社会にもっと強くアピールする研究だったら学会内部の始末で済んでいたのかどうかわからない.有機半導体業界全体がそのままなくなっていたとしても驚かない.