所得税の負担率

日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠 - kojitakenの日記

論旨以上に根拠としてかかれてる所得別課税割合のグラフにかなりの違和感を感じたので,少し自分で調べてみた.といっても,税金関係は完全に素人なので,むしろ突っ込み待ち.

元のグラフの出典は国税庁「平成19年分申告所得税標本調査(税務統計から見た申告所得税の実態)」らしい.

ということで,2006-2008年の統計から所得別の課税割合のグラフを書いてみた.具体的には総括表にある申告納税額/合計所得額を計算してグラフ化してみた.(打たれてる点の位置はその額以下という意味で,100億円超=10e10円超のみ10e11のところに点を打ってる)

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もとの記事で紹介されているグラフとかなり違う.負担率がなぜか14%程度で飽和するってのが変すぎるけど,負担割合が最高税率に達する辺りからフラットになっているというのは,統計の意味を考えるとかなり自然.(この統計の合計所得額は所得税が課税されるべき所得の合計額で,申告納税額も所得税のみ)

50億円を超える人たち(グラフで100億=10e10円より右側に打たれている点)の負担率はかなり低いじゃないかと言う人がいるかも知れないけど,

50億円超の所得の人(人)
200632
200737
200822

てな感じなので,統計としてなんか議論できるような人数じゃない.

追記

しかし,改めてみるとすごいグラフだな.

配当所得とかは入ってるようなので,節税対策をきちんとすればこの時代のインカムゲイン税率の10%あたりに押さえることが可能.といっても,実際に全国民対象で統計をとってみたら確かにそういう辺りに落ち着くというのはすさまじい.節税にかける人々の努力はおぞましい限りだ.

よく言われることだけど,この努力をもうちょっと社会に貢献する方向に生かす税制を考えた方が,最高税率を増やしたり分離課税をどうこうするとかよりもはるかにいいよね.

追記2

x軸が少し間違ってたので修正.論旨には影響ないけど.

ついでに,上のグラフは「納税額」(実際に払った額)を合計所得で割ってグラフ化してあるんだけど,払うべき額でグラフ化するとどうなるかというとこうなる

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なんか,出典元のグラフに近づきましたね.つまり,

  • 高額納税者はスキームを作って合法的に脱税する
  • 高額納税者は(どうやってるのかしらないが)払うべき税金を払わない

ということらしい.その組み合わせがあの1億円以上からほぼフラットになる「所得税負担率」のグラフにつながるということで.うーんおぞましい.